「日本学術会議法案に反対する声明」 2025年3月17日 社会思想史学会幹事会
社会思想史学会幹事会は、日本学術会議を特殊法人化するための「日本学術会議法案」(以下「法人化法案」)が2025年3 月7 日に閣議決定されたことを受け、この法人化法案の内容に対して次の二つの観点から深い懸念を表明します。
第一に、2020年10月1日に6名の会員候補の任命が拒否された理由がいっさい開示されないままに、法人化法案が提出されたことです。同年10月6日に「日本学術会議推薦者の任命拒否についての声明」を発表し、内閣総理大臣および政府に任命拒否の理由開示を求めてきた社会思想史学会幹事会としては、このような形での法案の提出は容認しがたいものです。
第二に、日本学術会議では日本国憲法第23条「学問の自由」の理念の下、ナショナル・アカデミーの独立性を保障するための要件を以下のように示しており、社会思想史学会幹事会としてもそれを適正なものと考えますが、法人化法案の内容がこの要件に抵触する可能性がきわめて高いと思われることです。
① 学術的に国を代表するための地位
② そのための公的資格の付与
③ 国家財政支出による安定した財政基盤
④ 活動面での政府からの独立
⑤ 会員選考における自主性・独立性
法人化法案では、新生学術会議法人の発足時に、政府が会員の選考・指名を恣意的に行う可能性が、完全に排除されてはおりません。また、内閣総理大臣の任命した監事および評価委員が学術会議の活動を監査すること、会員の選考助言委員会や運営助言委員会を法定化することなども、この法人化法案には含まれています。こうした一連の規定は、学術会議の独立性を根本から損なう危険性をはらんでいると言わざるをえません。
「学問の自由」は個人の研究の自由のみならず、学術機関・学会等の組織自治や独立性をも保障する理念です。そして、学術会議というナショナル・アカデミーが国内で法的に最も高度な独立性を享受する存在の一つであることは、日本国憲法第23条ならびに現行の日本学術会議法からも明らかです。学術会議の独立性が揺らぐことがあれば、日本全国のあらゆる学協会の自律的な活動、ひいては自由で民主的な日本社会のあり方に深刻な影響が生じかねません。
学問の自由は、民主主義の根幹を根底で支える、社会の発展にとって不可欠の価値です。日本の学術の独立性を脅かし、未来の学術の営みを損なう可能性のある法案に対して、私たちは断固として反対し、政府に対して慎重かつ透明な議論を求めます。